コスタリカから日本へ。アニメーターが見つめる、D・A・Gで働く魅力と価値 #Dカラ_023
こんにちは、株式会社D・A・G公式note『D.COLORS』編集部です。
D・A・Gをカタチづくる人を紹介するコーナー『D.PEOPLE』。
今回登場するのは、東京本社でアニメーターとして活躍するイザギレ・ファビアン。コスタリカから「日本のエンタメのような、メッセージ性の高いものづくりに挑戦したい」と来日したアニメーターに、D・A・Gでものづくりをする魅力や、ゲーム・CG業界を目指す方へのアドバイスを聞いてみました。
ー おつかれさまです、本日はありがとうございます!
始めに、現在担当している業務を教えてください。
ファビアン:おつかれさまです、よろしくお願いします。
現在は有名IPのシミュレーションRPGシリーズのプロジェクトで、レイアウト、モーション、実装を担当しています。制作のほかにも、作業の効率化のために、ワンクリックでデータの細かいチェックができるツールを開発するなど、テクニカルな提案も行っています。
D・A・Gには2020年に入社して、もうすぐ丸4年経ちます。これまでに世界的なゲームシリーズのナンバリングタイトルのプロジェクトを複数経験しました。
ー ファビアンさんのバックグラウンドについてお伺いします。
コスタリカご出身ということですが、CGの道へ進むきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
ファビアン:大学までをコスタリカで過ごしたのですが、小さいころ、テレビでゲーム開発などのドキュメンタリーがよく流れていたんです。それを観ていて「ものづくりって面白そうだな」「グラフィックデザインってかっこいいな」と興味を持っていました。
自分の道が明確に決まったのは12歳のときです。学校のオリエンテーションで、アビリティテストというスキルや特性を診断するテストがあったのですが、その結果を見た先生から「ああ、あなたはアーティストか医者に向いているね。どっちがいい?」と聞かれたんです。
絵を描くのが好きだったし、ものづくりに興味があったから「アートかな」と答えると、中南米で唯一、CGの授業が行われているコスタリカのヴェリタス大学のパンフレットをもらいました。そのパンフレットをみて「パソコンでこういうアートができるんだ、コスタリカでもCGが勉強できるんだ、これはすごい!」と思って。
その日、家に帰ってすぐに母にそのパンフレットを見せて「将来、これがやりたい!」と言いました。その道が今日までずっと続いています。
ー 12歳のときに自分の進む道が定まったのですね。それからは、どのように過ごされたのでしょうか。
ファビアン:それからは「早く大学に入って、アートの専門的な勉強をしたい!」という気持ちでいっぱいで、数学とか社会とか、興味がないことも勉強しなくちゃいけないのが苦しかった(笑)。常に「表現したい、アウトプットしたい」と思っていて、時間を見つけてアメコミのようなオリジナルの画を描いたり、「ドラゴンボール」や「るろうに剣心」を真似して描いたりしていて「ああ、自分のやりたいことはこれなんだ」という気持ちがずっとありました。
ー コスタリカでは、日本のアニメがよく流れているのでしょうか?
ファビアン:それはもう、アニメもゲームもいっぱい。「ポケモン」、「FF」、「ゼルダ」…有名なものはもちろん、ちょっとディープなものもたくさん流れていました。最初は「アジアから来ている作品」という認識だったけど、空手を習うようになって日本のことを知り、「日本のエンタメの根幹には、日本ならでは文化が共通点としてあるんだ」と自分の中でつながっていきました。
そのころは日本のゲームにも夢中になっていました。まさかそのゲームのリメイク作品に、20年後に自分が携わって、スタッフクレジットに自分の名前が載るなんて、当時は全く想像もしていなかったな。
ー そして、高校卒業後に晴れてヴェリタス大学に入学されました。 待ち望んでいたCGの授業がやっとスタートしましたね。
ファビアン:はい。ただ、技術の面では常に「世界と比べて、まだまだ遅れているな…」と感じていました。僕が大学に入学した2010年当時は、コスタリカではCGは最先端のジャンルだったけど、大学で一番難しい授業でさえ、世界のレベルと比べると差があって…。
自分はまだこのレベルを勉強しているのに、ピクサーやディズニーではとんでもないCG表現の作品が生みだされている。「自分がこのレベルのものを作れるようになるまでに、一体どのくらいかかるんだろうか?」という、焦りや危機感といった気持ちがありました。
ー そのころから ”世界”を意識していらっしゃったのですね。
ファビアン:そう。当時、コスタリカのCG・ゲームの業界はスタートしたばかりで、アメリカのプロダクションやスタジオからの孫請け・曾孫請けの仕事がほとんどでした。だから、大学の講義もそういったマーケットに向けた、とてもベーシックな内容だったんです。僕はいろんなことをやりたかったし、ものづくりの上流にも携わりたかったから、「コスタリカに留まってアーティストとしてやっていく」という考えではありませんでした。なので大学のCGの授業だけでなくカメラや映像制作についても自分で勉強していましたね。
ー コスタリカに留まることは考えていなかったとのことですが、活動拠点としてアメリカではなく、日本に目を向けられたのはなぜだったのでしょうか。
ファビアン:アメリカの作品よりも、日本の作品の表現の方が好きだったから。アメリカはエンタメ性が強い、迫力を重視するものが多いけど、日本の作品は重みがあるというか、感情に訴えかけるメッセージ性が強いものが多い。日本の作品に触れるたびに「こういう作品をつくりたいな、日本でアーティストとして働きたいな」と思っていたから、大学から独学で日本語の勉強も始めました。
ー よく言われていらっしゃると思いますが…とても日本語お上手ですね!
ファビアン:ありがとうございます。…自分で言うのはあれなんですけど、2015年に日本で働き始めたときからそんなに変わっていないと思います。
日本で過ごすなかで敬語も習得したので、今は不自由なくやりとりができます。
ー 日本に来てからは、どのように過ごされていたのでしょうか。
ファビアン:2015年に大学を卒業して、その翌週に日本に来ました。初めは名古屋で映像作家として企業のPRドキュメンタリーのムービーやVFXなどを制作していました。これまでのクライアントも、最初は僕のことを「外国人か…」と躊躇したり身構えていた人もいたと思うけど、すぐに日本人と同じようにコミュニケーションが取れることを分かってもらえたと思います。
ファビアン:そのあと、栃木県鹿沼市の地域おこし協力隊として3年間勤務しながら、副業として映像制作やVFXの講師をやりました。そこでつながりができたD・A・Gのアートディレクターから、「うちに来ない?」と誘ってもらったのが、D・A・Gに入社したきっかけです。コーポレートサイトをみると、有名なIPの実績がたくさんあって「すごい!ここで働きたい!」と思って応募しました。
ー ここからは、D・A・Gでのものづくりについてお伺いします。
この4年間で印象的なエピソードはありますか。
ファビアン:入社してすぐの話なんですが、僕が知っているものづくりの仕事の進め方と違ってとても驚いたことがあります。
D・A・Gに入るまでは、ジュニアや入社してすぐのアーティストは、数カットだけといった一部の仕事しかできないものだと思っていました。だから、入社してすぐに、世界的に有名なゲームプロジェクトにアサインされて、まるまる1シーンのモーション修正を「ファビアン、これできそう?」と聞かれたときはとても驚きました。しかも、ボスバトル直後の絶対にみんなが観る大事なシーン!「これはやらないと!」と思って一生懸命やりました。
もしかしたら、モーションチームのリーダーに僕のスキルを試されていたのかもしれないけど(笑)。OKをもらえたときは嬉しかったし、即戦力として結果を出せてよかったと思いました。この会社には社歴に関係なくチャンスを与えてくれる環境があるんだなと感じましたね。
それからは、特に依頼されていなくても先回りしてツールをつくってみたり、言われたことしかやらないのではなく、自ら提案したり、仕事を積極的に「はいは~い!」と引き受けるようにしています。そうしていると入社して数か月後には実装のメイン担当を任せてもらえるようになりました。
「ファビアンはアニメーターとしてももちろんだけど、それだけじゃなくて、テクニカルな部分でもリードしてくれて助かってる。」と言ってもらえて嬉しいですね。
ーファビアンさんからみて、チームや制作環境の雰囲気はどうですか?
ファビアン:モーションチームは…、すごく助け合うチームだと思います。誰かが「ここ、ちょっと困ってて…」と言うと、「あ!それ、僕もこのあいだやってみて、○○で解決できました! よかったらこのあと通話して一緒にやりませんか?」というコミュニケーションが日常的に行われていて、みんなで切磋琢磨しているチームですね。
ークリエイターとして、D・A・Gで働く魅力や価値は何だと感じていらっしゃいますか。
ファビアン:いろんな会社と一緒にものづくりができることはやっぱり刺激的です。D・A・Gには有名IPの実績がたくさんあって、現在も多くのプロジェクトが走っています。当然だけど、パブリッシャーや作品によって進め方や優先順位が全く違って、まさに「十人十色」。D・A・Gでは、プロジェクトを通していろんな価値観に触れて、腕を磨くことができる。こんなに幅広くいろんなことを吸収できるのは、ほかの会社ではできないことだと感じています。
新しい考えややり方に出会うたびに自分のものにしたいと思っているし、クリエイターとしてそうでなければいけないと思っています。
ファビアン:それに、D・A・Gは、メンバーの意見をすごく聞いてくれる会社だと感じます。日本は縦社会というか、決まったことを言われたとおりにしっかりやる人が多いけど、でも僕は外国人なんで、そこをちょっと無視してみたくなるんです(笑)。入社して間もないころから、ディレクターたちがディスカッションしているときに「例えばこういうやり方はどうですか?」と提案していました。そんなとき、D・A・Gでは「まだ1年目だから…」「入社してまだ3か月だから…」と切ってしまうのではなく、提案の場を設けてくれたり、しっかり経緯や背景を説明をしてくれたりするんです。そういうところもこれまでに経験したことがないと感じたし、しっかりと向き合ってコミュニケーションをとる環境だからこそ、クオリティの高いものづくりが行われているんだと思う。
ー たしかに、D・A・Gにはメンバーとしっかり向き合うカルチャーが根付いていると感じます。
モーションをつくるときのこだわりについて教えてください。いいものを作るために、意識していることや、工夫していることはありますか。
ファビアン:「想像しない」ことかな。僕がD・A・Gでこれまでに担当したプロジェクトがリアリスティックなテイストだったこともあるけど、「こんなかんじかな~」と想像で作ると、なんだかふわふわしちゃうしリアリティに欠けてしまう。自分で実際に動いてみて、それをスマホで撮影して動きを確認したり、YouTubeでリファレンスを探して「ああ、こうすればもっと重みが出るんだ」みたいに、必ず確認するようにしています。
このあいだも、あるプロジェクトで武器を振りかざすモーションを制作したのですが、松嶋さんと「達人感がある、もっとカッコいい振り方にできないか?」という話になって。なにかいいリファレンスないかな…とYouTubeをいろいろ探しました。
同じ武器を振る動画はなかったけど、代わりに野球選手がバットを振るシーンを見つけたので、それを何度も何度もコマ送りで見て「あ、こういう風にやったほうがカッコよく見えるんだな…!」と発見したことをブラッシュアップに反映させました。そんなふうに、自分の記憶やイメージだけで作らないで、必ず見て確認するのがこだわりかな。
ー もっともっとお話をお伺いしたいのですが…
最後に、ゲーム・CG業界を目指す人に向かってエールを送るとしたら、どんなアドバイスやメッセージを送りますか。
ファビアン:CGで何をやりたいかにもよるけど、「常に観察する」ことが大事だと思います。例えば映画をなんとなく観て「面白かった!」で終わるのではなく、「どんなふうに動いているんだろう」「どんなふうに作られているんだろう」という意識を持って観ること。
僕が大学でCGを学んでいたころ、CGにおけるAIを研究しているポルトガル人研究者の方がコスタリカに講演に来ていました。当時はリギングが一番やりたかったので、その先生にリギングについていろいろ質問していたんですけど、「もっと上手くなるために、なにかアドバイスもらえませんか?」と聞いてみたんです。
そのときに、その研究者の先生から「常に”リガー” でいてください。目に映るすべてを ”リガー”の目で見てください。そうすれば、全てのものに必ずヒントがあります。」とアドバイスをもらいました。これはリガーだけではなく、クリエイターにとって大切なマインドだと感じていて、その言葉はずっと心のなかで大事にしています。
あとは、興味がないことでも実際に経験してみることも大事ですね。CGではこれまでに経験したこと全てがアウトプットにつながると思います。チャンスが回ってきたとき、やったことがない人よりも経験していた人のほうが絶対にいいものが作れるはず。なので、ガンプラに興味がなくても組んでみたり、ギターでもピアノでも、なんでもやってみる姿勢がとても大切だと感じます。
アニメーションをやりたかったら、興味がない作品だとしてもどういう動きをしているのか観察したり真似して動いてみたり、背景制作をやりたい人は、実際にいろんなところに訪れてみて得られるものが必ずあると思う。例えば、本物の富士山の前に立って「ああ、なんて大きいんだ!」「なんだか自分がちっちゃく感じる…」とか、自分でリアルに経験してみることが大事だと思います。そういうマインドを持っている人と一緒にものづくりをしたいですね。
これからも貪欲に、見て、体験して、感じて、吸収して、クリエイターとしてもっと成長していきたいです。
ー ファビアンさん、本日はありがとうございました!
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